丸木美術館とであって2

丸木美術館の横には、都幾川が下って行く
足を入れると爪先が少し濡れるほどに浅い

小さな小さな石が敷き詰められた川底は、水がとおした光を細かく乱反射させて穏やかだ

美術館をでると、たいていは、川縁に降りた
川面の優しさに、つかの間、心を預ける
弱い心には、ありがたい一時だった

美術館の向かいの奥まった所に、家があった
丸木夫妻のお住まいか

ある時、川縁から振り仰ぐと、その家の前の小さな草ッ原に呉座ををひいて、七輪に鉄瓶をかけ、
絵を書いていらしたのか、丸木ご夫妻がおられた
少し肌寒かったが、お日様がそれをおぎなって
なんとも、おかしがたい長閑な光景だった


数年後、丸木美術館を訪ねた時
発電機の故障で電気がつかなかった
原発の電気は、使わないと自家発電していたのだ

入館をあきらめて、川縁に降りた
あの、長閑な鉄瓶のゆげと、ご夫妻の姿を思い出した

闘っているのだ

夫妻の長閑な光景は、深く美しく、尊い

丸木夫妻が鬼籍に入られて久しい
今を、なんと感じられてるのだろうか